こんにちは。東京カメラ部の塚崎です。

日々、地方創生の最前線で指揮を執る首長、自治体職員、DMO、そして観光産業に携わる皆様へ。

この「The Letter」は、写真の撮り方や、美しい風景だけを紹介する場所ではありません。 ここは、人口減少と財政縮小という厳しい現実に立ち向かう皆様と、「いかにして地域が生き残るか」という戦略と政策を共有するための「思考の実験室」です。

「地の利」の逆転:なぜ今、地方が強いのか

かつて、クリエイターとして成功するためには「東京」に住むことが必須条件でした。仕事、機材、情報、すべてが東京に集中していたからです。 しかし、この10年でゲームのルールは劇的に変わりました。「高性能カメラの普及」と「SNSの台頭」です。

SNSは、地方在住者のハンデであった「情報発信」や「営業」の壁を取り払いました。 一方で、写真には「現場に行かなければ撮れない」という物理的な制約が残ります。つまり、クリエイターにとって最も重要な資源である「被写体へのアクセス」においては、地方が圧倒的な優位性を持つようになったのです。

東京には仕事はあっても、圧倒的な大自然や固有の伝統文化はありません。 かつては東京のカメラマンがコストをかけて地方へ通っていましたが、今は変わりつつあります。その土地に住み、その土地を深く愛し、年に数回しか現れない奇跡的な瞬間を毎日狙うことができる「地元の人」の方が、高クオリティな作品を生み出し、仕事も獲得できる時代になってきているのです。

私たちが運営する「東京カメラ部10選」の選出実績を見ても、その傾向は顕著です。 新しい才能は、もはや東京だけにあるのではありません。日本各地で同時に芽吹き、その土地に根を張ったまま、世界レベルの活躍を始めています。

 「一過性の施策」から「投資」へ

しかし、こうした「地元の可能性」が十分に活かされず、従来の慣習的な処方箋が選ばれ続けている現状もあります。 例えば、移住促進のための「金銭的インセンティブ(補助金)」や、一過性のイベントへの多額の支出などです。

もちろん、これら全てを否定するわけではありません。しかし、行動経済学の視点に立てば、「お金」だけで結ばれた関係がいかに脆いかは明らかです。 住民が誇りを持てない場所に、無理やり観光客を呼ぼうとするキャンペーンは、住民の幸福度を下げるだけでなく、来訪者にも居心地の悪さを感じさせ、負のスパイラルを招くリスクがあります。

必要なのは、一時的な特効薬ではなく、地域の基礎体力を上げる「筋トレ」です。 お金を配るのではなく、若者がクリエイターとして活躍できる「舞台(仕事)」を用意すること。見慣れた日常を「宝物」に変える視点を持つこと。そして、その場所を「稼げる場所」に変えていくことです。

データと現場が示す「本音」の処方箋

私たちはこれまで、日本最大級の審査制写真投稿サイトを運営し、延べ7000万を超える投稿作品と、約575万人のコミュニティと向き合ってきました。 このLetterでは、その膨大なデータの潮流と、全国の自治体様とのプロジェクト現場で得た実体験に基づき、きれいごとではない「思考実験」や「事例」を共有します。

  • カメラの力を用いた「定住策」: 補助金に頼らず、若者が地元に残りたくなる「役割」と「誇り」の作り方

  • 稼ぐ観光の設計図: 「見る」だけの観光を、高付加価値な「体験」と「産業」へ変える工夫

  • 現場の失敗学: きれいな成功事例の裏にある、私たちが踏んできた「地雷」と教訓

普段、Noteなどのオープンな場では、写真愛好家に向けて「カメラがある暮らし」の楽しさを中心に発信しています。 しかし、このクローズドなLetterでは、実務家の皆様に向けて、もう少しシビアな「本音」や「悩み」、そして明日からの施策に使える「戦略」を綴ります。

現代はログ社会であり、発言の一貫性が過剰に求められる時代です。しかし、激変する社会において、思考を固定化させることはリスクでしかありません。 だからこそ、ここでは私の「現時点でのベストな思考」を、忖度なく共有したいと考えています。

「うちの地元には何もない」。そう諦める前に、一緒にカメラを片手に足元を見てみませんか? そこには、東京のプロも嫉妬するような「地の利」を持った新しい才能が、あなたに見つけられるのを待っています。

10年後も選ばれる地域であるために。 皆様のご登録を、心よりお待ちしております。

東京カメラ部 代表 塚崎 秀雄

塚崎秀雄について

東京カメラ部代表

ソニーなどを経て2007年に起業。運営する「東京カメラ部」は、延べ575万人が集う日本最大級の審査制投稿サイトに成長。現在は、写真家の「視点」を通じて見過ごされていた地域の日常を見つけ出し、地方創生につなげる活動に注力している。政府機関や全国の自治体などと連携し、写真を通じた地域のファンづくり、住民のシビックプライド(地域への誇り)醸成による持続可能な地方創生に取り組んでいる。

著書

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