第2回:脳のメカニズム「馴化(じゅんか)」の恐怖 ――なぜ、毎日見ている絶景に感動できなくなるのか
【現在地:幸せの循環モデル】
今回も第一回に引き続きステップ1の【発見】です。私たちの目を曇らせている「脳の仕組み」について深掘りします。 【発見】→【誇り】→【共有】→【経済】→【還元】 ↻
【前回の振り返り】
第1回では、「何もない」という言葉の正体が、脳の「馴化(慣れ)」であることをお話ししました。今回は、その馴化に加え、もう一つの心理的盲点である「不注意盲」について解説し、なぜ住民の力だけでは地域の魅力が見つけにくいのか、その科学的な理由を解き明かします。
「背景」化する絶景
地域住民にとって、雄大な山並みも、歴史ある神社も、毎日の通勤路にある風景です。これらは、脳にとって「予測可能で、反復される刺激」です。私たちの脳は、限られた注意のリソースを有効に使うため、こうした既知の情報を意識的な処理から外し、自動処理(バックグラウンド)へと回す性質を持っています。
これを補強するもう一つの概念として、認知心理学の「不注意盲」があります。人は、特定のタスク(例えば「遅刻せずに会社に行く」「今日の夕飯の献立を考える」など)に注意を向けているとき、視野の中にある他の情報が見えなくなります。有名な「見えないゴリラ」の実験のように、目の前にゴリラの着ぐるみが現れても、別のことに集中していると気づかないのです。
つまり、日々その土地で生活を営んでいる住民(生活者)にとって、風景は「見る対象」ではなく、生活というタスクをこなすための「舞台背景」として処理されています。これは生物としての正常な適応ですが、地域活性化の文脈においては、魅力を見落とすという「副作用」として働きます。この状態で「魅力を見つけろ」と精神論で迫っても、構造的に非常に困難なことなのです。
※本連載は無料ですが、第二回からはメールでの登録が必要となります。また、メール登録をいただいた方には東京カメラ部から地方創生に関連するメールが送信されることがあります。