第0回:プロローグ ――「何もない」のは本当か?

連載企画:地域の『当たり前』を未来の『資産』に変える処方箋
塚崎秀雄 2026.02.20
誰でも

はじめに

役場の会議室や、観光協会のカウンター、あるいはシャッターの閉じた商店街で、重苦しい沈黙が流れる瞬間を経験された方も多いのではないでしょうか。

「うちの町には何もないよ。若者も出ていくばかりだ」

誰かがポツリとこぼし、皆がそれに頷いてしまう。資料をめくる音だけが響く、諦めにも似た空気が支配する時間。私たちも、全国各地の現場で何度もそんな場面に立ち会ってきました。

しかし、私たちはあえて問いかけたいのです。本当に、何もないのでしょうか? 物理的に魅力が存在しないのではなく、長年住み慣れたことによって、心理的に「見えなくなっている」だけではないでしょうか?

誰のための連載か

本連載「地域の『当たり前』を未来の『資産』に変える処方箋」は、基本的には地方創生の最前線で指揮を執る首長、自治体職員、DMO、商工会、そして観光産業に携わる実務家の皆様に向けて書いています。

しかし、それだけではありません。「自分の出身地をもっと元気にしたい」と願う住民の方々、その地を愛しカメラに収め続けているカメラマンや写真愛好家の方々、「地域の魅力を授業で伝えたい」と考える学校関係者の方々、あるいは地域企業の経営者様。そうした、地域への熱い想いを持つ個人の皆様もまた、本連載の大切な読者です。立場は違っても、目指す「幸せな地域」の姿は同じはずだからです。

見えない「霧」の正体

心理学には「馴化(じゅんか)」という言葉があります。毎日見ている風景に対して脳が慣れてしまい、反応しなくなる現象です。住民の方が「何もない」と言うのは、謙遜でも嘘でもなく、脳の仕組み上、見慣れたものへの反応が鈍ってしまうことが一因である、と捉えることもできます。

この連載では、精神論ではなく、心理学や行動経済学といった「科学の力」や、東京カメラ部に集まる約7000万もの作品や反応の傾向データ(個人が特定されない形で集計したもの)、そして私たちの現場での経験を活かして、このみえない「霧」を晴らす方法をご紹介します。

本連載が目指す「幸せの循環」

本連載を通じて、私たちが構築を目指すのは、次のような自律的なサイクルです。

【発見】→【誇り】→【共有】→【経済】→【還元】

  • 発見:カメラの視点を用い、住民自身が地元の価値に気づく。

  • 誇り:シビックプライドを醸成し、まずは「住んでよし」を実現する。

  • 共有:適切な情報・マナーと共に発信し、共感を呼ぶ。

  • 経済:来訪者が対価を払い、地域にお金が落ちる「循環の入口」を作る。

  • 還元:その収益で風景や文化を守り、次世代につなぐ。

連載の読み方

本連載は全24回と長丁場ですが、忙しい皆様が読み進めやすいよう、毎回以下の構成で統一します。

• 前回の振り返り:冒頭で要点を2〜3行でおさらいします。

• 今回の問いと提案:事例や理論を交えて解決策を提示します。

• 次回への期待:最後に、次につながる問いを投げかけます。

どの回から読み始めても、全体像の中での位置付けがわかるように設計しています。

更新スケジュールとお願い

本連載は、金曜日のお昼頃に公開予定です。月2回〜4回程度の配信を予定しています。

机上の空論ではなく、できるだけリアルタイムな事例や、現在進行系の取り組みを(個人情報や守秘義務に抵触しない範囲で)生々しくお届けしたいと考えています。 そのため、動いているプロジェクトの状況に合わせて連載ラインナップに変更が入ったり、現場の繁忙により掲載が遅れる可能性もあります。 現場の「ライブ感」も含めて共有するための変更ですので、あらかじめご容赦いただければ幸いです。

著者より

この連載は、誰かを批判するためのものではありません。人口減少や馴化といった構造的な課題に対し、知恵と視点でどう立ち向かうかという「希望」をみなさんと一緒に考えるためのものです。明日からの公務に、経営に、そして日々の暮らしに役立つヒントとなれば幸いです。

※本連載は無料ですが、第二回からはメールでの登録が必要となります。また、メール登録をいただいた方には東京カメラ部から地方創生に関連するメールが送信されることがあります。

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